幼い恋

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「弥生ってさ、蛍みたいだよね」 突然言われて 「へ?」 と変な声が出る 「だってさ、蛍の君がフリーのときはキラッキラッ輝いてんのにさ、彼女が出来るとお通夜みたいに暗くなっちゃって 付いたり消えたり付いたり消えたり」 弥生は面白そうに話すマキを睨んで無言の抗議をする 「いいですよー どうせ蛍ですよー チカチカ光って儚く消えていくんだ…… でも、真っ暗な中で光ってたら、もしかしたら一緒に光ってくれるかもしれないって思うじゃん?」 弥生の頭の中では幼い頃懐中電灯に誘われてひかり始めた蛍が飛び交う もしかしたら私に誘発されてあの人も……なんて思うくらいの自由は許されていいはずだ ファミレスの店内から暗い外を眺めるとたまたま通りかかった男性と目が合う あからさまに目をそらすのも気がひけてどうしたらいいか悩んでいると、その男性は少しだけ口元を微笑ませて通り過ぎた そのスマートな対応にちょっとだけカッコいいなんて思った弥生に、 「何?どうしたの? なんか嬉しそうじゃない?」 と、何も気づかなかったマキが聞く 「なんでもない なんかさ、蛍っていっぱいいるでしょ?」 「いや、今はいないよ」 「そうなんだけど、でもいるところには一匹じゃないじゃん」 「ああ、まあ、そうね」 「だからさ、蛍の君にこだわらなくてもいいのかなって今思った」 「……やっと?   いや、でもそう、そうなのよ!! でもなんで?どうして急に?」 急な展開にマキは混乱する 「いや、なんとなく 昔を思い出したら懐中電灯に誘われた蛍は一匹じゃなかったなって思って」 頬杖をつきながら外を眺める弥生の前に、 「お待たせいたしました カルボナーラとグラタンです ご注文は以上でお揃いですか?」 と店員が料理を運んでくる 「はい」 と答えながら顔を向けた弥生に、さっきガラス越しに微笑みをくれた男性が今度は営業スマイルを弥生に向けている 弥生はその偶然に思わず店員を見つめると、店員はいたずらに成功した子供の様な含み笑いを堪えて口元が上がっていた
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