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鶴城は得意そうな顔をして笑う。
毎日ランチをとるなんて事は難しい。それでも一緒に過ごす時間を多くするため、これだけの努力ができるんだぞと、そう誇示したいのだ。
愛ですねえ、などと探偵は分かった風な事を言う。
「でも、毎日というのは盛っているんじゃないですか」
「そんな事はないですよ。僕は彼女が来るのを待って、いつも一緒に行っていました。未世子のお気に入りのレストランがあって、大体そこで食事をしてました」
探偵の言葉に鶴城はムキになって反論してする。疑われた事に苛立ちを隠せていない。
本当ですか、と探偵は重ねて問う。
「いえね、未世子さんはよく同期の友達とランチをしていたらしいので、毎日というのは見栄なのかなあと思いまして。ご気分を害してしまったならすみません」
ヘコヘコと頭を下げ、へつらった笑みを浮かべた。対する鶴城は戸惑った様子である。
「それは、その」
「ああ、いいんですいいんです。余計な事を聞きました。忘れてください。どうも緊張しているようで」
鶴城を遮った彼は目の前のカップを手に取り、ずずずっと啜る。あまり美味しそうな顔ではない。コーヒーと花の香りが混ざって変な味がするのかもしれなかった。
「こんな生業をしているのだから、話を聞くのに慣れているとお思いでしょうが、全然です。根っからの口下手でして。碌に聞き込みもできやしない。ははは」
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