エントランス

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 駐車場の障害者スペースに車を停め、エンジンを切る。人出の多い夏休み期間にもかかわらずこのスペースが空いているのは、やはりここが遊園地だからだろうか。  妻の香織さんが、車椅子を用意してくれた。俺は、大きくドアを開けた運転席から、車椅子に移乗する。 「ねぇ真也くん。やっぱり帰らない?」  絶叫マシーンが苦手な香織さんの声に俺も気後れするが、「絶対楽しめますから」という言葉とともにチケットを手渡ししてくれた彼を信じたい。 「大丈夫だよ。ここってさ、乗り物に乗らなくてもレストランが充実してるっていうし」 「そうよね。それに観覧車はバリアフリーってHPに書いてあったものね」  俺の苦手なお化け屋敷もバリアフリーだが、という言葉は飲み込んだ。 「そうそう。観覧車だけでも一緒に乗れたら、俺は嬉しい」  大人も子どももわくわくする遊園地。香織さんが運営しているクリニックに勤務する理学療法士からもらったチケットを使って、俺たちは入場しようとしている。  車椅子の俺が乗れないアトラクションが多数を占めることは承知の上だ。だが、俺は香織さんが楽しむ姿をたくさん撮ってあげたい。  そんな思いで受け取ったチケット。  それが俺と香織さんの最高の思い出になるとは、ふたりともこの時は思いもしなかった。
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