プロローグ

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夜を甘く見てはいけない。 耳元で囁く男の声には、 湿った吐息が混じっていた。 真夏の、深夜のコンビニの店内である。 その日の為に、髪には美容院で細かく、 ハイライトを入れてカットを施した。 5才は若返って見えるようにと、 臆面もなくオーダーし、久しぶりに額を斜めに 横切る前髪を作ってみたのだったが、 男のくぐもった声音に、 その甲斐があったかも知れないと思った。 「ねぇキミ‥‥、僕さぁ、今まで色々あってさぁ、 長いこと、していないんだ、 っていうか身体がさぁ、できなかったんだけど、 今夜は珍しく興奮してる、、 キミは綺麗だし‥‥ねぇアレ買っていいかな?」 所々、聞き取れないのに、主旨だけはおそらく 完璧に伝わってきて、私はコクリと頷いた。 コンビニの店員は、私達がこれからすることを 察しているんだと思うと、余計に 官能をくすぐられたらしい柔な私は、 背を向けて飲み物を選んでいる(ひと)に、 自分から腕を絡めていた。 (ひと)の身体に触れるのは、すごく 久しぶりだった。
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