プロローグ

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大人には、冒険が必要だ、絶対に。 冒険への希求は、 日を追って増してくるのだけれど、それは 私が幸せじゃないってことなんだろう。 私は今、切実に冒険を欲している。 こんなにも世の中、失敗談は溢れているのに。 例えば、不倫という名の危険行為は非常に 手っ取り早いらしくて、不特定多数が 試みているけれども一度、通報されてしまえば、 体裁という名の砦は脆い。 そんなこと誰だって、知っている。 それでも今、 私は狂おしいほど、危険行為を欲している。 遂に私は、ジャングルめいた夜の都会に こうして足を踏み入れている。 真夏の夜の都会は、昼間とはまるで違う世界に 見える。 煌びやかなネオンと、暗がりとの対比の中で、 恋人達が艶かしく生息している。 さっきから時折、ぷるぷるきちゃうのは、 まさか武者震いというやつかしら? いっそ、このまま死んだって構わないと思う、 延々とこの先、家族という重荷を背負いながら、 生き続けるほうが ある意味、過酷なんだろうし。 冷めていながら、 こういう激しさも持ち合わせていたんだと、 長いこと忘れていたものを思い出している。 ただ頭の片隅で今夜、知り合ったばかりの 男についての、 数少ない情報をかき集めてもいる。
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