夜の底へ

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普段は、たばこを吸わない私だが、 水タバコ独特のエキゾチックな機材に、心が踊った。 店内の一番奥の、靴を脱いで上がるスペースが、 空いていた。 色付きのガラスのボトルの水から、ポコポコと 音がしている。 店主の運んできたそれの、驚いたことには 先に具合を調べる為に、店主はマウスピースに 口を付けたのだった。 アンダーグラウンドなムードが増してくるが、 郷に入れば郷に従え、と思う、 だって私は、異国に来たのだから。 異国は、案外近くにあったのだ。 今だけは、息苦しい日常のことを考えるなんて 馬鹿だ。 彼と私も、会話の続きをしながら、 同じマウスピースを交互に用いて、水タバコを 吹かす。 徐々に、お酒とは違った静かな盛り上がりを 言葉と体内に宿して行く。 今夜は帰らなくて良い口実を、家族には伝えて あったが、場合によっては 彼に着いて行かない選択肢もあるわけだった。 その場合、1人でシティホテルを探して 泊まるつもりでいたが、私が 水タバコをすっかり気に入った頃、 「部屋を取ってもいい?」と、彼は言ってきた。
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