お行の松と彰義隊の埋蔵金

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 新政府は彰義隊の江戸市中取締の任を解き、武装解除する旨の通達を出した。当然ながら素直に従う筈もなく、彰義隊は上野付近で新政府軍と衝突を起こす。頃や良しと見た大村は武力討伐を決定。正に彰義隊は大村の罠に嵌まったのである。  上野寛永寺周辺に立て籠もり徹底抗戦の構えを見せる彰義隊に対して、五月十五日未明、大村益次郎自身が指揮を取る新政府軍は総攻撃を開始した。降りしきる雨の中、懸命に戦う彰義隊であったが、やがて新政府軍の持つアームストロング砲が火を噴くと瞬く間に陣地は壊滅状態となり、僅か一日で勝敗は決した。敗れた隊士達は上野の山を散り散りに逃走し、上野戦争は終結した。  埋蔵金の物語はここから始まる。 二 「父上、お急ぎ下さい!」 「う、うむ」  息が切れ苦し気な父の横で新三郎は叫ぶ。少し休ませてあげたいが、まだそれほど遠くには逃げていない。ここで立ち止まっては危険だ。父である新右衛門に肩を貸し懸命に走る。走るというよりも歩いているが正しいが、それでも彼は必死であった。暫く進んだ後、新三郎は立ち止まった。
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