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占いの建物に着くと、翼は腕を組んで壁にもたれかかった。
「女子って本当占い好きだよな。これだから女子は面倒くせーんだよ」
「15分だけだし別にいいじゃん」
そう言って待ち時間用の椅子に座ろうとすると、彼がにやりと意地悪な笑みを浮かべた。
「お前勉強苦手だし受験のことでも占ってもらうんだろ?」
「違うし!」
「じゃあ、何を占ってもらうんだよ」
「翼には内緒」
翼との関係を占ってもらおうと思ってた、なんて言える訳ないと思ってそっぽを向く。そんなことがバレたら本当にこの関係が終わってしまう気がした。
そんなことを思っていると、建物のドアがガチャリと音を立てて開いた。中から出てきたのは、若いOL風の女の人で彼女はそそくさとその場を後にした。
そんな彼女を黙って見送ると、美鈴は壁にもたれかかっている翼の方を見た。
「翼も一緒に入る?」
もし入ると言われても無理と言うつもりでそう聞いてみた。だが、彼は表情ひとつ変えずに「早く行って来い」と面倒臭そうに言っただけでそれ以上は何も言って来なかった。
建物に入ると、照明は思ったより明るく短い廊下が続いていた。その廊下を緊張した面持ちで歩くと、突き当たりに1つの部屋が見えた。
ドアには「占いはこちらです」と書かれた表示がされており美鈴はそのドアをガチャリと開けた。
中に入ると、目に入ったのはテレビで紹介されていた中年のおじさんだった。
おじさんに「こんにちは」と挨拶され美鈴も反射的に「こんにちは」と返す。すると、彼は自分の向かい側の椅子に座るように促してきた。
美鈴が椅子に座ると、彼は美鈴に名前と生年月日を紙に書かせると手相を見せるように言ってきた。
そして、それを見るなり彼はズバズバと一方的に語り出した。
「性格は明るくて短期でめんどくさがり屋。好きな人はイケメンで一緒にいて楽な人。恋愛は、一途で障害がある方が燃えるタイプ。あと、母子家庭でしょ?彼氏と出かけてばかりの母親と仲が悪くて同居しているおばさんと思ってる。友達は多い方で高校の時に愛犬家でしっかり者の親友ができるね」
美鈴が何かを話す隙もなくおじさんはズバズバと話を続けた。最後の友達の件に関しては、どうか分からないけど後は全部当たってる気がする。
唖然としていると、おじさんは美鈴の方を見て口を開いた。
「で、何か聞きたいことはあるかな?」
「あ、えっと、3年間片想いをしている同級生がいるんですけど彼って私のことどう思っていますか?」
率直に思っていたことを伝えると、おじさんは「片思いねぇ」と呟くとすぐに口を開いた。
「彼もあなたのことが好きだね」
「えっ」
体中に衝撃が走った。名前と生年月日と手相だけでそんなことが分かるのかと思い思わず口を両手で抑える。
だが、占い師は「ただ」と言葉を付け足した。
「彼に告白されるのは15年くらい先になるかな」
「15年!?」
15年後と言ったらその頃にはもう30歳だ。20代のうちに結婚したいな、と思っていた美鈴は心の中でがっかりした。
「がっかりした?」
「少し…」
笑みを浮かべるおじさんにイラッとしながらそう返すと、彼はハハッと短く笑って話を続けた。
「30歳は怒涛の1年になるみたいだね。モテ期がくるよ」
「モテ期!?」
びっくりして聞き返す美鈴に彼は小さく頷いて続けた。
「まぁその後はトントン拍子で話が進むみたいだね。31歳で結婚するよ」
「そんなに先なんですか?」
知らない方が良かったなーと思いながらも心のどこかで安心する自分がいるのも確かだった。もし、本当に彼の言う通りになるならこの恋は叶うのだ。そう思うと、少しわくわくしてきた。
「あなた、素直になれなくて彼と喧嘩ばっかしてるでしょ?」
「はい」
「周りに両思いにしか見えないって言われない?」
「言われます。痴話喧嘩とか…」
そう返すと、おじさんは小さく頷いた。
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