初恋の続き

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 誰も聞いていないのに委員長カップルの話を事細やかに話した美鈴の話を3人は頷きながらきいていた。 「木嶋さんと小田君も2人で行動してたんだ」 「3Cのクラス公認の委員長カップルだもん。2人デートするって」  最初に口を開いたなーちゃんに続いてはるもうんうんと頷いた。 「まぁそうだよね」 「あの2人って美鈴のライバルだったんだねー」  ぐっちにそう言われて美鈴は頬を膨らませた。 「もうっ!誰もそんなこと言ってないし!大体あの2人は付き合ってんだからわざわざ占い行ったりしないでしょ?」 「でも、噂では2人で恋人の聖地に行ったらしいよ。名前は忘れたけど、海の近くの鐘がある公園があるんだって」 「へーいいじゃん。どっかの毎日口喧嘩ばっかしてるバカコンビと違って委員長カップルはラブラブだねぇ」 「だから、私は付き合ってないって!」  美鈴がぐっちにそう言うと、彼女は「でも」と前置きしてニヤリと笑った。 「素直になれないだけでこっちから見たら付き合ってるように見えるよ?どう見ても両思いじゃん」 「は?」  美鈴の短い返事になーちゃんがうんうんと頷いていた。それに続いてはるが机に乗ったチョコレートに手を伸ばしながら言った。 「美鈴、先生に何か言われなかった?」 「何かって自由行動のこと?それはバレてないけど…」  美鈴がそう返すと、はるは首を横に振った。 「部屋抜け出すなとか移動していいのは同性の部屋だけとか」 「あーあれか」  そういえば今日、ホテルに移動した後で女性の国語教師の高岸先生に呼び止められてそんなことを言われた言葉を思い出した。  “青野さん、分かってると思うけど移動していいのは同性の部屋だけだからね”  翼とは別に付き合っている訳じゃないけど、教師は自分達にも目をつけていたのかと美鈴は今になって気づいた。 「あ、やっぱり何か言われたの?」 「うん、高岸先生に移動していいのは同性の部屋だけだって」 「ほら、やっぱり付き合ってるように見えるんだよ」  はるは笑いながらスナック菓子に手を伸ばした。そんなはるに対して「なんでよ」と返そうとしたのと同時に同じスナック菓子に手を伸ばしていたぐっちが「美鈴」と名前を呼んできた。 「何?」 「今夜、委員長カップルがどうしてるか知ってる?」 「普通に部屋にいるんじゃないの?」 「それがそうじゃないんだよねー」 「え?」  美鈴が聞き返すと、仲良しグループ内で唯一ケータイを持っているなーちゃんがケータイの画面を見せてきた。  メールは同じくクラスの仲良しグループ内ではケータイを持っているはると同じソフトテニス部の部活仲間の石尾君からだった。 『さっき、隣の部屋の奴に聞いたんたけど木嶋智沙と小田亮太が2人で抜け出そうとしたらしい。ホテルの人にとめられたみたいだけど、今めっちゃ先生に怒られてる』  そんな石尾君のメールの最後はこんな言葉で締め括られていた。 『今回は何もしなかったこっちの優勝だな。翼は夜の散歩がしたいとか訳分かんねーこと言ってたけどさ。』 「へーあの2人真面目なのになんか意外だね」 「修学旅行だしラブラブしたかったんじゃない?」  そう言って笑い合うはるとぐっちを横目で見ながら美鈴はなーちゃんのケータイを奪うと無言で文字を打ち出した。 「え、ちょっと美鈴?」  びっくりするなーちゃんに美鈴は「ちょっとだけ貸して」と言うと急いでメール文を打った。 『バカコンビって言うな!あと、夜の散歩って何のか翼に聞いて』  すると、返事はすぐ着た。でも、文面からして明らかに石尾君からのメールではないことは確かだった。 『美鈴と2人で近くのコンビニでアイスでも食おうと思ってたんだよ。お前、今日晩飯の後でアイス食べたいって言ってたじゃん。委員長カップルが抜け出さなかったら迎えに行こうと思ってた』  それを見て一気に頬が熱くなる。  そんな美鈴を隣で見ていたなーちゃんが「え?何?何?」と言って美鈴が握る自分のケータイを覗き込んで声をあげた。 「あーらこれは、委員長カップルに先越されちゃった感じだね」 「え?何?」 「どうしたの?」  ぐっちとはるも近づいてきてケータイを覗き込む。それを見て先に声をあげたのはぐっちの方だった。 「美鈴、惜しかったねぇ」 「別に惜しくないし!翼はいつもと同じようにふざけようとしてただけだって」 「でも、コンビニのアイス食べたかったでしょ?」 「ソフトクリーム食べたから満足してるし!」  美鈴はそう吐き捨てると、なーちゃんのケータイで短い返事を打つと彼女にスマホを返して窓際ののベッドに向かった。 「もう寝る!おやすみ!」  そう言ってベッドの中で目を閉じると、3人の会話が聞こえてきた。 「またいつか夜にコンビニに行ってアイス食べよって美鈴もたまには可愛いこと言うね」  誰かがそう言ったのが聞こえてきた。  だけど、友達のケータイとはいえそんな約束のメールを送ったことが恥ずかしくて美鈴はベッドの中で丸くなって目を閉じた。
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