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昔、希望講なるものがあった。
これは単純に言えば、怪談話の集まりで。
大抵、神社、お寺の一部屋を借りて行うものであった。
当然、夏の涼を求めて夏に行われる事が多かったのだが。
この講、色々な縛り約束事があったのだ。そのルールの為、一年中、突然行われる事もしばしばあった。
その約束事とは、講の名にもなっている、
希望、と言うところにある。
まず、見取り人が一人、これは場所を提供した、神社や寺の者がなるのが通例である。
そして巻き話しをする者。
その者が最後に怪談をして締めとなる。
そして、その者が次の集まりにて巻話をする者を、希望する、つまり決めるのである。
さて、ここまでだと、大した縛りではないと思うであろう。
この講の最大の縛りは、物語が聞いた事があるとか、誰かの話の真似であるとか、聴衆の者が異議を唱え、それを見取り人が認めると。巻話の者は簀巻にされて、川に流されたり、山へと捨てられるのである。
まあ、そこはそこ、申し訳ありませんとか、勘弁してくださいと、手をついて謝れば。許す慣わしで御座います。
つまり嫌な奴、天狗になっている輩などを戒め、頭を下げさせる。
所謂、意趣返しの講なので御座います。
ですが、時に反目し会う二人が、交互に
次はあなたを希望、あなたをを、繰り返すと。
町内で寄合をして、二人とも簀巻にして、山と川へ捨てろ、等と、決めたりもしたもので御座います。
当然、命を奪うのが目的では御座いません。
友人、家族などが一時放置、気持ちを入れ換えたなと思う頃、助けるので御座います。
何にしてもこの講、怪談を楽しみ、嫌な奴を戒める為にあるので御座いますから。
とそこで
「巻方、では、次の希望を」
と見取り人が言った。
巻方はそこで厳かに顔を上げると。
「次はあなた、あなたを希望します」
と言った。
そう今、読んでいる、あなた、ですよ。
終わり。
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