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翌日。僕と雫がミドリさんから呼び出されたのは、二時間目の現代文の授業中だった。
「おはようございます」
がらがらがらん、と派手に音をたてて、教室の前の扉が開く。にこやかな笑顔で立っていたのはミドリさんだ。先生が、あっけにとられている。
「ピンポンパンポーン。二年A組高杉和穂さん、桂木雫さん。三年C組の星影美登里さんがお呼びです。至急、星影さんの元までお出でください。くりかえします、二年……」
「ミドリさん、くりかえさなくていいから! いま行くから!」
僕と雫はあわてて教科書をカバンに押しこみ、クラスメイトと先生の冷たい視線が背中にねじこまれるのを感じながら、教室を飛びだした。
後ろ手に扉を閉めると、クラスからほっという声が漏れた。
「やあやあ二人とも、きょうも来てくれたね。ご苦労、ご苦労」
ミドリさんは、まったく悪びれない態度で茶化し、いつもの速足ですべるように廊下を進む。ミドリさんに遅刻や早退をさせられたことは何度もあったが、授業中にラチられたのは新パターンだった。
「な……いったいきょうは何ですか?」
「散歩研究会に入部希望者だよ」
「入部希望者? 授業中なのに?」と、雫が目をぱちくりする。
ミドリさんは先に階段を飛ぶように一階まで下りると、僕たちの体を両手で押しとどめた。
「そこでストップ。二人は、ちょっと隠れてて」
ミドリさんは僕らを階段の陰に立たせ、くるりと回れ右をする。「コッホン」とかわいいせきをしてから、保健室の扉をノックした。
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