一 章  不思議な仲間が 集まって

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 誰もが腫れものにさわるように、ミドリさんと接する。生き残った僕と雫に対する反応も、似たようなものだった。  復学したミドリさんは今年一月、散歩研究会を立ちあげて僕と雫を誘った。部員はもちろん三人だけだ。 「珊瑚ちゃん、だっけ。ミドリさんのこと本当に知っているの?」 「有名人じゃないですか、大事故で生き残った奇跡の美少女って。でもどうして助かったか、どこもツッコミが弱いんだよなー。だから私が取材しようと……」  救出後、週刊誌やネットは噂をさんざん書きたてたけど、真相は誰も知らない。  ミドリさんは、ニコニコしていた。 「すごい! そんなこと聞きに来た生徒は珊瑚ちゃんが初めてだっ」 「えっへへー」  一年生記者は、うれしそうに頭をかく。 「そんなニュース部の敏腕記者なら、私のこと調べたのかな?」 「モチモチロン!」  自慢げに胸を張り、すらすらと暗唱した。 「三年C組、星影美登里先輩。出身は東京で中三から琉神崎市、成績は学年だんトツ一位で開校以来の神童と高評価。ただし入学当初からトラブルメーカーとも呼ばれ、教師から煙たがられるっと」  ふんふん、とミドリさんはおもしろそうに聞いている。 「高一の七月、プール授業中に起きた『男子パンツ盗難事件』。星影先輩が体育備品室で盗難品を発見しましたが体育教師が自演と断定、三日間の停学になりました。教師は五日後、走り幅とびの実演中に落とし穴に落ちて病院送りになり、その後退職ー」  うわー、ミドリさんらしい復讐だぜ。 「九月、『せっちん詰め事件』。女子トイレの盗撮カメラを回収しようと夜の学校に侵入した男子三人が、星影先輩らしい人影で個室に隠れたところ扉を外から封鎖され、朝まで監禁されました。十月、『地下室くさや焼き事件』。全教室に悪臭が充満しスプリンクラーで水浸しになった日、星影先輩一人が所在不明です。ただ空き教室に隠れていた学校連続放火犯がずぶ濡れ状態で逮捕されました。十一月、『授業参観日パイ投げ大乱闘事件』……」  一つ一つの狼藉に一応の理由はある。ただ穏便な解決法がいくらもありそうなのに、あえて不穏きわまる強硬策を選ぶのがミドリさんである。
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