一 章  不思議な仲間が 集まって

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「たいした取材力だね、私の事件をそこまで調べるなんて。あっ、違った。私がぬれ衣を着せられた事件のこと」 「ミドリさん、ぬれ衣の用法を間違ってます」 「星影先輩だけでなく、たいていの生徒の情報はありますから」  また「えっへん」と胸を張り、今度は胸ポケットから手帳を取りだした。 「例えばあ。二年A組高杉和穂先輩、ご両親は有名な教育評論家です」  少しだけ、心が痛んだ。 「小四で野球を始め、盗塁が得意でしたが中二で腱を断裂。以降は万年補欠、中三時の公式戦は七打数一安打四失策が全成績です。琉高では帰宅部、現在は散歩研究会。友人によると『困った人や捨てネコを放っておけず残らずひろう性格』」  なんとなく自覚している。 「『……と言えば聞こえはいいが、川に落ちた友人を助けようとして自分が川に落ちて友人が助かる残念な奴』という評価が一般的です。ついたあだ名が『スイーパー』だって、ぷぷぷ」  後輩女子は、遠慮のカケラもなかった。 「同じく二年A組桂木雫先輩、琉神崎市出身。小二からソフトを始めてピッチャー」  雫の様子をそっとうかがうと、広い青空を無表情で見あげていた。 「小五から中二まで日本代表女子ジュニア部の強化合宿に四回参加。東中二年と三年で全国連覇、中二時のU16世界大会でも優勝投手でした。ソフト強豪校の勧誘を蹴って琉高に進学するも……」  ぱちん。  平穏を破る音が響いた。  珊瑚ちゃんの腕にあった手帳が、横に五メートルほど飛んでいた。
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