一 章  不思議な仲間が 集まって

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 珊瑚ちゃんは「あれ?」という顔をしたまま、止まっている。 「記者魂は立派だけど。プライバシーを明かしていいかは別問題ね」  手帳をはじき飛ばしたミドリさんの顔は、僕からは見えない。  珊瑚ちゃんは「あれ?」という顔をしたまま、止まっている。  さっきと違うのは、額につつつーっと汗が流れていることだ。 「私のことは、何を書いてもかまわないけど。二人のことは、そのくらいにね」  珊瑚ちゃんは「あれ?」という顔をしたまま、止まっている。  ミドリさんは手帳を拾うと、珊瑚ちゃんの指先にはさんだ。 「はい、おしまいっ」  振り向いたミドリさんが、ヒマワリのような笑顔でぱん、と手をたたくと、珊瑚ちゃんの体が急にあたふたと動き始めた。 「じゃあ、私へのインタビューは明日の放課後。場所は体育備品室でいいよね?」 「え? あー、えー、わかりました。たたた体育備品室、ですね?」  珊瑚ちゃんはあわただしく手帳をしまうと「失礼しますっ!」と叫び、砂煙をあげながら跳弾のように校庭を駆けていった。 「あーミドリさん。とってもこわい顔してませんでした?」 「はてさて。こわい顔って、どんな顔?」  ニコニコしながら、ミドリさんはすっとぼける。  僕と雫が教室に戻ったのは、結局、六時間目の授業が二十分ほどすぎてからだった。  扉を開くとクラスメイトが一瞬、僕らに視線を向けてから、すぐに見てもいない教科書に視線を落とす。  数学の先生は僕らが席につくまで、教壇の上で石像になっていた。 「高杉と桂木か。授業には、なるべく出てくれよな」  ため息まじりに言いながら、石化の呪いが解けた先生は授業に戻る。  ミドリさんと僕と雫は、教室を抜けようと授業をサボろうと、決して叱られることがない。僕たちの心の傷に、特別に配慮しているそうだ。  それはあの倒壊事故がこの学校に残し、腐っていく傷跡の一つだった。
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