あつい、あつい。

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「内容は、事前に説明させていただいたとおりです。あの別荘で、今日から明日までの約一日を過ごして頂きます。条件は一つ。私達が迎えに行くまで、あの別荘の地下室から出ないで頂くことです!」 「え、地下室?あの別荘の地上部分にいたら駄目なの?」  眼鏡の気弱そうな男性が言うと、説明役の女性社員は“そうです”と頷く。 「申し訳ありませんが、建物の上の方は掃除もされてないですし、今回は一日地下室にいていただきます。ただしご安心ください、地下室と言ってもホテルのように快適です。それぞれ皆様の個室もありますし、憩いの場のリビングやキッチン、もちろんお風呂もトイレもあります。食料や水、電気、ガスなども問題ありません。一日過ぎたら私達社員が地下室にお迎えに上がりますので、それまでそこから出ないでいただくことが条件です」  それと、と彼女は指を一本立てる。 「事前にお話した通り、携帯電話の類は持ち込み禁止です。そもそもこの近辺は電波がほとんど通じません。私達が迎えに行くよりも前に地下室から出てこられた方は失格となり、お給料はお支払い致しかねますのでご注意ください」  まあ、それは契約書に書いてあったことだから問題ないだろう。窓のない地下室ということだけが少し不安だが、それだけだ。極端に汚い部屋というわけでなければ、一日過ごすくらいどうってことないだろう。  気になるのは、同じ地下で過ごすメンバーである。アラフォーとはいえ、私も一人の女だ。乱暴者の男や不衛生な人間が一緒なのは御免被るところだが。 ――まあ、見たところ……露骨にやばそうなのはいない、かしら。一応、みんな書類審査は通ってきているんだし。  バスの中をぐるりと見回して私は思う。座っている人達は窶れている人も多かったが、少なくとも一見して露骨な危険人物というのはいないようだった。
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