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夏の夜は暑い。わかっていたが、これほどのものだっただろうか。
真夜中と思われる時間に、私は目を覚ました。エアコンがいつの間にか切れてしまっている。部屋の中はまるで蒸し風呂のような暑さだった。私は寝ぼけながらも必死でリモコンを手繰り寄せると、再びスイッチを入れようとした。
だが、つかない。電源そのものが入らないのである。
故障ではないようだった。壁沿いに這うようにして進んで電気のスイッチを入れるも、こちらもつかないのである。停電している、と気付いて私は青ざめた。
――か、勘弁してよ!ここ地下室よ?このままじゃずっと真っ暗じゃないの!!
幸い、枕元に非常用の懐中電灯はあった。私はそれを片手に、そろそろと周囲を照らす。部屋の中にブレーカーらしきものはない。とすると、リビングか廊下だろうか。万が一地上にあった場合は、ここを出ない限り回復させることができないということになる。そうなったら、外に出た人間はその時点でお金を貰う権利を失ってしまうのだろうか。――停電は、あちらの落ち度としか思えないというのに。
――どうしよう。
リビングや廊下やキッチンも探したがやはりブレーカーは見つからなかった。すると、エアコンが切れたことで暑苦しさを感じた他の三人も次々と起き出してきた。流石に夜は、派手な女性と筋肉質な男性は別々の部屋で寝ていたらしい。
私は仕方なく、三人に状況を説明した。
「んだよ、なんで停電なんか!暑くて眠れないだろうが!」
「私に当たらないでくれますぅ?それに明かりがつかないことの方が大問題だと思うんですけど。朝が来てもこの地下室じゃ、真っ暗なままですよぅ?」
派手な女性もイライラと髪を弄っていた。それを見て、困ったように眼鏡の青年が言う。
「……ブレーカーを直すには、誰かが地上に出なくちゃいけないってことですよね。でも、出たらきっと失格になる……」
きっと、みんな思いは同じだろう。自分以外の誰かを行かせたい。失格になってお金がパーになるのは避けたい。
だが、問題は殴り合いで決めるとなった場合、どう見ても筋肉質な男性の圧勝であるのが目に見えていること。しかも女性を無理矢理レイプしようとするなど、かなり乱暴者であるようだ。正直戦いたくなどなかった。
そしてここにはもうひとり男性がいる。暴力的でなくても、眼鏡の青年も力では私と派手女性より強いだろう。いずれにせよ、私達のどちらかが行かされることになりそうな気配である。
「……私が、見てくるわ」
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