イメチェン

新しい自分

　この夜の出来事は、その後のゴキブリの発育・環境に大きな影響を与えた。狭くて暗くて湿気の多い場所を好むゴキブリの主な潜伏場所は変わらずとも、人間らは害虫という見解を改め、自ら変化を求める昆虫と正した。珍しい色合いのゴキブリを見つけては、レアだと言って写真を見せ合う学生もいるほど。
　汚いところを好むからと、汚い生き物という見方を人間は改めなければならない。姿かたちを変えることで、受け入れられることだってあるからだ。
　ゴキブリは生まれたときからゴキブリで、生まれた瞬間に嫌われる。けれどゴキブリにもいいところがあって、自然環境保持のため、死骸や落ち葉を食して分解させ、掃除屋としてひと役買っている。何より、恐竜以前から存在する子孫繁栄の凄まじいまでの生命力。にもかかわらず、攻撃力など外面的強さは持たない優しいやつだ。

「ねぇ、私にもやってくれない？　色はレインボーカラーがいいわ。交換する食べ物は、コレでいいかしら」

　メスのゴキブリは、ジョーにチーズの破片を差し出した。