長蛇の列

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長蛇の列

「OK、OK。順番にやるから押すなって。ただ青色が底ついてきたなぁ。まぁセントがもうすぐカラーを作って持ってくるだろうから、青色と緑を使いたいやつは、それまでもうちっと待ってな」  足だけをピンクに塗ったり、背中を水玉模様にしたり、綺麗にめかしたゴキブリたちは互いにその姿を見せ合い喜んだ。  ある日の深夜一時半頃。トイレに起きた山上は一匹のゴキブリを見つけた。 「おぉっ、何だ? あの白いの」  じっと目を凝らしながら、ゴキブリの行く先を目で追う。ゴキブリは脱ぎ散らかした下着の山を越え、ビールの缶の端を伝って歩く。同じ家に住みながら、山上は白いゴキブリに気がつくのに一ヶ月以上もかかった。 「ありゃゴキブリみたいに見えっけど、妙な色してんなぁ。何だありゃ?」  一匹二匹と、白いゴキブリはあちらこちらから、ひと場所を目指して列をなして歩いてく。  今夜は〝第一回Gデザインコンテスト〟の開催日。
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