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「なぁーんじゃ、ありゃあ」
あっちからもこっちからも、白を基調とした虫が同じ方向に向かい、どれもこれも背中には多彩な模様が描かれている。
「いやいや。どうみても形がゴキブリにしか見えんが、俺が近づいても逃げもせんと、みんなアッチに集まってんな。何だべ」
山上はぞろぞろと歩いていく様をただただ眺めていた。やがて最後尾が辿り着くと、ジョーがぴょんと一段高いところに降り立った。
「あぁみなさん。このおっさん。ここの家主さん。初対面のやつもいるだろ? この人がね、いつもオレたちに棲家と飯を提供してくれる、とてもいい人だ。みんな、お礼を言おう」
すると何百といるゴキブリたちが、一斉に羽音を震わせ、宙に浮いた。
「う、うわわわ……ッ。何だ、この数は」
山上は後ずさりしながらドスン、と尻もちをついた。
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