コンテスト

2/3

10人が本棚に入れています
本棚に追加
/21ページ
 眠い目をしょぼしょぼさせながら、山上は卓袱台の上で番号を書き写す。個人的見解で、百十数匹の中から好きなのを三つ、選べばいいだけだ。 「おっさん、どうよ?」  結果を書き終えた山上は、鉛筆をおいてシンクの上に立つジョーに言った。 「ジョーとか言ったな……。お前さんいいやつだな。みんなに自信つけさせてやって」 「……オレたちはみんな、生まれた時から嫌われ者なんだよ。どいつもこいつも見てくれだけで汚いだ、気持ち悪いだって駆除される一方でよ。一応は気ぃ使ってんだぜ。人間の目に触れないように、活動は夜だしさ。  だからおっさんみたいに夜眠ってくれれば、基本、オレたちと遭遇することはないんだ。  オレたちだって虫の仲間だ。足の数がそれを物語ってる。だけど人間はオレたちとの共生を鼻から嫌う。いつまで経っても、決してこの姿を受け入れてはもらえない。ならばーー」 「ジョーのじいさんがよーーッ」  セントが横から口を挟む。 「ジョーのじいさんが、俺たちゴキブリの行く末を案じてくれたんだよ。こんな肩身の狭い思いをせずに、楽しく生き残る方法をーーってな」  すると山上が、笑いを含ませながら自分のことを話し始めた。
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

10人が本棚に入れています
本棚に追加