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築五十七年の、昭和に建った家は疲れきっていた。一度焦げただろ、と思える古い柱が瓦屋根を重たそうに支え、耐え凌ぐ。
狭い玄関の向こうには三畳と六畳の部屋、傍に台所。食品や衣類が無造作に置かれていて、ゴミとの境界線はもはやそこに住む男にしかわからない。男は山上忠介という。
見れば飛び石のように平らな穴場が歩く道筋となっていて、障害物をまたぎながら奥へと進む。なかなか味のある平屋だ。そんな家に男はずっと一人で住んでいる。
そこに数年前から間借りしているジョーは、その家がとても気に入っていた。片付けをしない部屋がアスレチックのようで、野を越え山を越え、食べ物にも困らないこの家がとても気に入っている。壊れた扉もいい塩梅で隠れ家だ。
そんな環境だからこそ、そこに棲みたいと思うヤツらも自然と増えていった。
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