秋の夜長

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「え? 見間違いですよ。さっ、もうお帰りにならないと」 「いや。あれは」 「あっ、おっさん! 久しぶりだな」 「ど、どうしてここに」 「あらやだ。お知り合い?」 「え? ってことは、お前さんたちーー。いまに棲んでるのか?」  ダダダっと山上は玄関に近づき懐中電灯で周辺を照らすと、ガサガサと白いものが行き来しているのが見えた。ガラス戸の向こうには見覚えのある扇風機まで。 「河津さん。もしかしてーー」 「おい、みんなーー。おっさん来たぞ〜」 「マジ?」 「いやぁん。おひさーッ」 「オレらあれからいい棲家(とこ)見つけてさぁ、ここんちもおっさんちと張るくらい居心地いいんだぜぇ」    それ以来、河津は二度と山上家に遊びに行くことはなかった、とさ。            了
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