イメチェン

仲間

「いいか？　オレたちが楽しく安全に、安心して生きるためにはどうしたらいいか。それが一番大事だ。
　こっからは自分の狭い考えなど捨てろ。小さいことは気にするな。全ては自分の考えが自分を苦しめている。
　オレたちゴキブリにも棲む権利がある。この世の中に共存するものは、互いの主張を邪魔しなければ、みな快適なはずだ。
　人間はオレたちを汚いものとして扱う。それはオレたちが暗くて汚いところが好きだからだ。だがその場所を作っているのは紛れもなく人間で、アイツらのゴミから出たものをオレたちが食しているのも事実。クモやムカデといった敵も同じだ。
　人間は自分らが食べこぼしたエサや掃除の行き届いていない埃でオレたちを誘っといて、それに集まったオレらを排除する。勝手なヤツらだ。
　けれどこの世は人間が主体だ。逆らうのにも限界がある。ならば人間に好かれる努力をしようではないか。全ては生きながらえるためだ。クモもムカデもそんなことは考えない。オレたちはクモやムカデみたいに、気持ち悪い足は持ってない。オレたちはスタイルがいい。
　だから生きる楽しみを見つけよう。自分の姿を見せても恥ずかしくない自分になろう。色どりを明るく、爽やかにーー。そうすれば、人間らはオレたちの駆除を考えず、オレたちの姿を流行りのSNSに載せるかもしれない。少なくとも見つけた瞬間、咄嗟にスプレーを持たないはずだ。
　これがオレの、じいさんから伝わった記録に基づいた結果に相当する」