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テーブルの上には、青いマグカップが二つ。涼花が入れてくれたのはアイスミルクティーだった。日本茶を切らしているのでこれで、と彼女は少しだけ申し訳なさそうに言う。
「日本のお姫様だから、ミルクティーなんて口に合わないかもしれないけど。……というか、まだミルクを入れない方が良かったかもしれませんね、ついうっかりいつもの癖で」
「お構いなく。ていうか、突然お尋ねしたのにお茶まで出してくれるって、あんたすごくいい人ね」
「いえ、明日は有給を取っていますし、ヒマだったので」
「ふうん?」
明日は七月七日、木曜日。ようするに、七夕だ。何か特別な行事でもあるのだろうか。そういえば、さっきスルーしてしまったがベランダには一本だけ笹の枝が指してあった。ということは、お願い事をぶらさげるつもりでいるのだろうか。
「七夕好きなの?私にとっては気が重くて仕方ないんだけど」
思わず本音が出てしまった。すると、目の前の女性は目を丸くして言う。こうしてよく見ると彼女はそこそこ美人だった――私ほどではないが。ただ、少々痩せすぎているような気がしないでもないが。やつれている、とでも言えばいいか。有給が取れるのだから、凄まじいブラック企業に勤めているというわけではないだろうが(と、有給休暇を申請しても基本却下される自分である)。
「貴女、織姫様なのに七夕が嫌いなんですか?」
「嫌いっていうか、憂鬱なだけよ。だから、明後日の朝までこの家に置いて欲しいの。明日の夜をやり過ごせたらそれでいいから」
「どうして?一年にたった一度だけ、恋人に会える日なのでは?」
「……そんな簡単なことじゃないのよ」
明日の夜は晴れると天気予報では言っている。上司もそう言っていたから、まず外れないだろう。
七夕の夜に雨が降ると天の川が増水して二人が会えなくなるというのは事実であり、そう考えれば本来七夕の夜に晴れるのは喜ばしいことであるはずなのだが。
「私達、もう七年会ってないの。実はここ数年ずーっと、七夕の夜には雨が降っているのよ」
自分達がちゃんと会えるのは、七年ぶりのことだった。お互い不老不死の身であるので、どっちも外見年齢二十歳のまま変わってはいないだろう。だから久し振りすぎて老けた姿を見られるのが嫌!なんてことはない。ないのだが。
「その上。七年前の七夕の日に大ゲンカして……それで別れて、それっきりになってるの。あの時は私も意地になっちゃったけど……今ならわかってるわ。悪かったのは私の方だったって。だから、どんな顔して会えばいいのかわからないのよ。向こうはもう私に愛想を尽かして、新しい女を作ってるかもしれないわ。私達、スマホ持っててもお互いの連絡先の交換は禁じられてるから、相手の状況が全然わかんないのよ」
「……今時の織姫と彦星はスマホ持ってるんですか」
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