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「令和の時代だもの、神様も価値観はアップデートしないとね」
ちなみに喧嘩の原因は非常にくだらないことだった。私達は七夕の日しか会えないので、日本でやるような行事はひとしきり七夕の日にまとめて行うことになるのだが――その時彼が持ってきてくれたバレンタインデーのチョコレートが、めっちゃくちゃ美味しかったのが発端である(一日しか会えないので、お互いにチョコを持っていくのが定番となっていたのだった)。
彼は元々、私よりずーっと料理が得意だった。私はそれがずっとコンプレックスになっていて、払拭してやろうとその年は手作りチョコを美味しく作ろうと奮闘したのである。
が、大失敗して、チョコは焦げるわ形は崩れるわの大惨事に。
それでも彼は美味しい美味しいと食べてくれたが、本当に美味しかったのはそこらのプロも裸足で逃げ出しそうなレベルで完成された、彼のガトーショコラの方だった。それで、私は惨めな気分になり、思わず差別的なことを言ってしまったのである。ようは、“男がお菓子作りが好きなんてほんと恥ずかしいわよね”と。自分でも思う、どれだけ時代錯誤なことを言ったんだと。しかも、本人がまったく言い返してこないで悲しそうに目を伏せるものだから、ますます腹が立ってしまって酷いことをたくさん言ってしまったのである。
本当は、ちゃんとお礼が言いたかったのに。
自分のへたくそなチョコも美味しいと食べてくれたことは、すごく嬉しかったというのに。
「……本当に、酷いことを言っちゃったのよ。きっと、向こうは私のことなんて嫌いになってるわ」
冷たいミルクティーを一口飲む。冷たくて美味しい。美味しいはずなのに、なんだかちょっぴり苦い気がしてしまう。完全に、私が自分の話でドツボにハマっているせいである。
完全に自業自得だ。本当に申し訳ないと思うなら尚更、私は彼に会ってちゃんと謝らなければいけないとわかっているのに。
「そもそも、私達が七夕にしか会えなくなったのだって完全に私のせいなのよ。彦星は自分も悪かったって上司に話したけど……本当に彼のことが好きで好きでたまらなくて、機織りの仕事サボって彼の職場に押しかけてたの私の方なんだから。ほぼストーカーだったわよアレ」
「そうなんですか?」
「ええ、そうよ。日本の古き良きお姫様のイメージとかけ離れてるから、昔話とかだとそういうの全部なかったことにされてるけど。完全に、私が肉食系で押して押して押しまくって手に入れた恋だったの。彼は誰にでも優しかったから不安で……私だけのものにしなくちゃ、我慢できなかったんだから。幻滅した?織姫サマがこんなんで」
「いいえ、全然。それくらいの方が女性としては共感できますから」
「ありがと。やっぱりあんた、いい人だわ」
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