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「なんだ。チビハルも一緒か」
ため息をついていた俺のことを見るとかの女は、ギラっと睨んでいた。しかし、俺も睨み返す。
「もうチビじゃねーし。昔とは違うんだよ。おばはん」
「お前って三年の先輩に向かってどう言う口の利き方なんだい? 幼いころに年上は敬えってならわなかったの?」
「このデカ女にはこういう接し方で良いって教わった気がする」
「小学生からの付き合いだからって生意気な奴め。ハルちゃん、チビハルとなんか一緒にいちゃダメでしょ」
この高校で幼馴染なんて三人しか居ない。
「小学校から高校まで一緒なんて俺にとっては悲劇だよ」
「それは、こっちもだい! チビハルのくせに」
「さっきからチビチビゆうな! もう身長も勝ってるだろ!」
「どうかな?」
余裕の雰囲気で言われてしまった。ちょっと見降ろされている気分。
「ハルねえ、見て!」
「久しぶりの背比べだね。チビを証明したいのか?」
薄気味悪い笑い。幼いころの思い出。ハルねえは懐かしそうに、楽しそうに笑ってる。
俺とデカ女が背中を合わせて並ぶと、横からハルねえが真剣に見ている。
「ハルくんも伸びてるね。だけど、ねえ」
ハルねえはそれっきり言葉を無くしていた。
「どうしたんだい? ハルちゃん、きっちり教えないと」
「そうだよ。いつまでもデカ女に見下ろされるのはごめんだ」
「一年くらいあれば勝てるかもね」
身長は負けていたらしい。言葉も無くなった。
「だはははっ。チビがチビを証明してるよ!」
思いっきり笑われてしまったが、あくまで俺はチビではない。ハルねえと比べたら普通に俺が勝っている。デカ女が規格外なんだ。
「まだ、デカ女に勝てないのか」
「残念ながら高校でも勝てなかったみたいだねえ。この一年なら逃げ切りかな?」
「うるさいデカ女!」
「チビハルは黙ってなさい」
どうしても負けてしまう。どうやら当人は身長が高いことを気にしてないみたい。逆に俺は女に身長で負けている事は悔しい。勝ち目はない。
「ハルちゃん見つけたから一緒に帰ろーかな?」
落ち込んでいる俺のことを無視って女の子二人で話し始めた。
「今日はソフト部の練習ないの?」
「入学式の日は流石に休みなんだ。つまんない」
「その辺で壁当てでもしてろよ」
「うっさいわ。チビハル! こいつが居なければ良かったのに。去年が夢の様だわ」
「ハルねえはお前のもんじゃねえから」
「チビハルのもんなのかい?」
その言葉には直ぐに返答できなかった。
「と、取り合えず今年からまた俺たちは一緒に帰るからな」
どうにかの反論。
「おこちゃまチビハルさんよー。お姉ちゃん離れしなさいな。高校も追いかけちゃって」
「それはそっちがハルねえを呼んだからだろ」
「ハルちゃんの応援がないと勝てないから」
「吹奏楽部でソフトボールの応援ってこの高校おかしいだろ」
帰り道になるバス停についてベンチに座りながら文句を言う。
「文句言わない! と言うことでチビハルは帰んなさい。遠いんだから」
「お前もだろ」
「あたしらはおこちゃまとは違うんだい。カラオケにする? それともボーリング?」
犬猿の仲とはこのことなのだろうか。
「ごめん。今日は久しぶりだから、ハルくんと帰りたいな」
ハルねえが俺の事を選んでくれたからそれはもう嬉しかった。
「しょうがない。シニアチームの時の後輩のお祝いに呼ばれてるし、そっちに向かおうか」
「はじめっからそうしてろ!」
「昔の兄弟っぽかった方が良かったなー」
つまらなそうに腕を頭の後ろで組んでぶつくさと文句を言いながら、デカ女の襲来は終わった。
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