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日本人なのだなあと、なんか感心しながらぼくは頷いた。ヒツジコもユキノジョウも漢字まで紹介されなかったからだ。ヒツジコが片方の眉を上げて「あれ? 言ってませんでした?」と不満そうな声を出した。
「ぼくも漢字ありますよ」
「え?」
聞いたことはなかった。ユキノジョウも「知らなかったの?」というふうにぼくを見ている。ヒツジコもくるりと一回転した。
「じゃあ、あらためて。ぼくはヒツジコです。未来って書いて、ヒツジコと読みます」
彩子が「漢字仲間」とヒツジコの手をとってくるくる回る。その瞬間、ぼくの中で何かが始まった気がした。ここからが何かだ、という確信があった。
ぼくたちは朝がずっと来なければいいのに、と願ってしまうくらい、たくさんたくさん話した。彩子は自然にぼくたちの中に入り込んだ。ずっと三人組と呼ばれていたけど、ぼくたちは心のどこかで彩子という空席を用意していたような気がした。彩子は、ヒツジコは、ユキノジョウはどう思っていたのだろうか。ぼくは聞いていない。できれば、同じであってほしいと思うけど、やっぱりそういうことは口に出せないものだ。
そうやって、ぼくたちは三人組から四人組になったのだ。
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