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「ホテルって、ラブホでいいのか?もう少しまともなとこ?っていっても、ろくなのないけどな」 「ラブホでいい」 「どうせ今夜は混んでるだろうから、ちょっと離れるぞ」 「うん」 田舎の道に、車を走らせる。 まだ8時過ぎだと言うのに、東京に比べてずっと暗かった。 途中またコンビニに寄って、飲み物やら酒やらスナック菓子を調達した。ゴムも一応買った。嗜みってやつだ。 それでもまだ、このまま、言われるがまま、ラブホに連れ込んで本当にいいのか、正直まだ迷っていた。 ほんとになに考えてんだか よく分からないよな 平野は無言で、窓の外を見ている。あんなことを提案しておきながら、あれからずっとまともに喋らない。 俺はどうしたらいいんだ。 もちろん、ヤろうと思えば、ヤれるけど。 今も平野が好きなのか、よく分からないのに。 じわじわと、苛立ってくる。 ふざけんな。 ようやく遠くなりかけていたのに。 忘れたわけではない。忘れたわけではなくても、さまざまな日常が折り重なって、ようやく見えなくなってきていたのに。 今日、平野に触ってしまったら、抱いてしまったら、もう、絶対に忘れられない。 平野のことをもう好きじゃなくても、二度と消えることはないだろう。 一生残る記憶になる。 その予感だけが、ひしひしと迫る。   それでいいのか? そうしたいのか? 自分でもまだよく分からないのに。 「俺がもしサイコパスでも、車で連れ込まれたらもう、走って逃げらんねーよ?」 最後の分岐点を用意したのに、平野は抑揚のない声で、いいよ、と小さく、でもはっきりと言った。
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