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田舎は娯楽が少ないからか、結構な数のラブホがある。それも、駅から離れたところに。 都会ではターミナル駅の真裏にホテル街が密集してたりして、上京したての頃は驚いた。 今夜は花火で部屋もだいぶ埋まってそうだったけど、適当なところに空きを探す。 あんまりボロいところは避けて、まあまあマシなとこを検索して、車をまわす。 その間もずっと考えていた。 ほんとに、いくわけ、平野と で、俺は、ヤるわけ?いまから? ぐるぐる迷っていても、すいた田舎道、すぐに目的地についてしまって、途方に暮れた。 「いくぞ」 車から降りてくる平野を見る。束の間迷って、手首を掴んだ。手はつなげなかった。 受付で鍵をもらって扉を開ける。目の前に迫るベットが大きくていやになる。 動悸がおさまらなくて、つかんでいた手を強く引いた。 あの時と同じように、よろめいて近づいた身体を受け止めながら、ベットに倒れ込む。 「わっ」 小さな声をあげた平野を仰向けに押さえつけながら俺はまだ迷っていたのに、ふと、さっきの平野のセリフが頭をよぎった。 夏になると、花火を見ると、地元に帰ると…… 俺はいつだって、平野のことを思い出す。 うっすらとした日常の向こうにようやく隠れかけたはずなのに。 いつも、カーテンが翻るように、鮮やかに。 まるで昨日のことのように。
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