2/3
前へ
/86ページ
次へ
平野のことを今も好きなのかどうか、俺には全然分からないよ。 でももう、今日の記憶が上書きされて、平野は一生、記憶から消えることはないだろう。 ずるいよお前……ほんとずるい どうしたらいいのか、どうするのが正解なのか、分からないまま。 でも、抗えなくて。 抗えるわけがない。今ならきっと、もっと上手なキスができる。 お前のこと、好きだったよ 分かっていた。 触れたらもう、止まれない。それだけは分かっていたんだ。警鐘も鳴っていた。ダメだと、良くないと、分かっていたけど。 俺、平野のことが好きだったよ その思いが鮮烈すぎて、結局俺は屈したんだ。 丁寧に口付けた平野の唇は柔らかく、少し乾いていて、次の瞬間にはもう、没頭していた。 耳から頬、首筋に左手を這わせる。暑かったせいか肌はしっとりと濡れている。 「や、あの、シャワーとか」 「あとでな」 「浴衣、暑いから汗がすごくて……」 「同じだよ、どうせ俺も汗だくだ」 「でも……」 なお何か言おうとする平野の口をもう一度塞いだ。 無理だ、待てない。 なぜかは、説明できないけれど。 俺はいまだに平野が好きなのかどうか、全然分からないのに。 気が急いて、一刻もはやく、帯で締められた浴衣を開いてしまいたかった。 それは単純に、性欲に負けたからなのか、目の前にいるのが平野だからなのかもよく分からないまま、帯に手をかける。 解き方がよく分からなくて、多少強引に引っ張ってしまった。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加