121人が本棚に入れています
本棚に追加
5
平野の細い手首を掴んで、ベッドに押し付けた。
平野は抵抗もせずにまっすぐ見上げてくるばかりで、いたたまれない気分になる。
「お前、やっぱ俺のこと馬鹿にしてるだろ」
「してない、ただ、賭けに出ただけ」
「……賭け」
「そう、賭け」
「賭けってなんの」
「笹原のメアドがまだ生きているか。笹原がメールを開いてくれるか、待ち合わせ場所にきてくれるか、一緒に花火を見てくれるか。それから……」
「それから?」
「それから……」
流れるようだった平野の口が止まる。
それから平野は、何をどこまで期待していたのか。
「そらから、笹原がもう一度キスしてくれるか」
もう一度キス、ね……
ふと笑う。
「お前、賭けに勝ったじゃん」
平野を押さえつけたまま、顔を近づけて、もう一度キスをした。ああ、だから今日3回目か。
「だけどやっぱり、馬鹿にしてるだろ」
「して、してないよ」
「ここまでされたらね、男は止まらないよ。単純で、馬鹿だから。分かってて誘っただろ……目的はなんだよ。それともなに?ちょっと気が向いて、からかって遊びたかったのか?」
イライラするよな。
そんなふうに扱われても、簡単に反応すんだぜ?
ほんと馬鹿みたいだろ。
裸に剥いた平野が目の前にいれば、今すぐにでもめちゃくちゃにしたいと思うよ。
からかわれてたとしても。
俺がもう、平野を好きじゃないとしても。
最初のコメントを投稿しよう!