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「白状しろよ。遊びでも、気の迷いでもなんでも、もうこうなったったら望み通り弄ばれてやるよ。お前、なに考えてんだよ」
顔を離して、体重をかけて強く手首を押さえつけたまま見下ろす。
身体の自由を奪われながら呆然と見上げていた平野が、ぽつぽつと零れるよう、口を開いた。
「もう、思い出してばかりなのは、いやなの。夏が来るたび、花火を見るたび、このままずっと思い出し続けるのかと思ったらしんどくて。もう一度会いたいと思った」
「会って、それで?こういうことまでしたいと思った?」
平野は息を呑んだように一瞬言葉に詰まり、それから頷いた。
「嘘つくなバカ」
なけなしの理性をかき集めて、体を引き剥がす。上体を起こして、膝立ちで平野の体を跨いだまま、押さえつけていた手首を離した。
「やめとけって」
「なんで」
「俺の理性が完全にぶっ飛ぶ前にお前、どっか離れろ」
「なんで?私とするの、イヤ?」
「イヤじゃないよ、イヤじゃないけど」
俺、お前のことほんと好きだったけど、今も好きなのかどうか分からないよ。
お前だってそうだろ、今、俺のこと別に好きでもないだろ。
好きなのかどうか分からないまま、いつも思い出していた。
夏が来ると、花火を見ると、地元に戻ると、この川をみると……
忘れられないって、やつだ。
「俺にも想い出があるんだ。無様な記憶だけど、それを無闇に塗り替えるなよ」
両手で目元を隠す。
こんなところで、間違っても泣いてたまるか。
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