2/3
前へ
/86ページ
次へ
「白状しろよ。遊びでも、気の迷いでもなんでも、もうこうなったったら望み通り弄ばれてやるよ。お前、なに考えてんだよ」 顔を離して、体重をかけて強く手首を押さえつけたまま見下ろす。 身体の自由を奪われながら呆然と見上げていた平野が、ぽつぽつと零れるよう、口を開いた。 「もう、思い出してばかりなのは、いやなの。夏が来るたび、花火を見るたび、このままずっと思い出し続けるのかと思ったらしんどくて。もう一度会いたいと思った」 「会って、それで?こういうことまでしたいと思った?」 平野は息を呑んだように一瞬言葉に詰まり、それから頷いた。 「嘘つくなバカ」 なけなしの理性をかき集めて、体を引き剥がす。上体を起こして、膝立ちで平野の体を跨いだまま、押さえつけていた手首を離した。 「やめとけって」 「なんで」 「俺の理性が完全にぶっ飛ぶ前にお前、どっか離れろ」 「なんで?私とするの、イヤ?」 「イヤじゃないよ、イヤじゃないけど」 俺、お前のことほんと好きだったけど、今も好きなのかどうか分からないよ。 お前だってそうだろ、今、俺のこと別に好きでもないだろ。 好きなのかどうか分からないまま、いつも思い出していた。 夏が来ると、花火を見ると、地元に戻ると、この川をみると…… 忘れられないって、やつだ。 「俺にも想い出があるんだ。無様な記憶だけど、それを無闇に塗り替えるなよ」 両手で目元を隠す。 こんなところで、間違っても泣いてたまるか。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加