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他に彼女ができてそのうち、今でも平野のことが好きなのか自分でも分からなくなっても、ずっと望んでいたような気がする。 会いたいと、もう一度話したいと。それから、謝りたいと。 全力で逃げたくせに。出来もしなかったくせに。 「あの、あの時は、ごめん」 「あのとき?」 「前の、花火の時。無理にキスしたのは、やっぱり、よくなかったよな」 思い出すたびに居た堪れないような恥ずかしさがあって、直視できないほどの鮮やかな記憶で。 日常の中に、上手に隠してやり過ごしているつもりだったけど。 夏じゃなくても、花火大会が遠くても、地元を離れていても。 平野のことを結局、忘れたことなどなかった。 それってやっぱ、ずっと好きだったってことなのかなぁ……? 俺は平野の頬に手を伸ばし、半ば無意識に、親指でその唇をたどる。 「なに?思い出してるの?」 「うん」 くすくすと、平野が笑う。 「今から、新しい記憶を作るのに?」 平野の手が、ベッドについていた俺の腕を下から撫で上げる。 「ね、思い出に浸るのはそれくらいにして。私、笹原と早く、そういうことしたい」 あー……平野、だから、あんまそういうこと、言うなよ 7年という歳月は、クラスメイトも簡単に大人の女にしてしまうのだなとクラクラした。 少し切ないような、でもワクワクするような、そんな気持ち。
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