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8 Fin
優しくしよう、と殊更に思って、とにかく甘く穏やかに抱きたかった。
強烈な快楽を彼女にあげられなかったかもしれないけれど、長く断続的に響く平野の高い声を、ずっと聴いていた。
幸せなのか、というとよく分からなかった。
ただできればずっと、できるだけ長く、この温かな気配の中に潜っていたかった。
好きだとか愛しているとか、そういう言葉は交わせなくて、ただ、可愛いと言った。事実、俺の下で顔を歪ませながら喘ぐ平野は可愛くて、今更、手に入れたいような気持ちになった。
「あ、あ……ささはらぁ…」
何度か熱に浮かされたような声で呼ばれて、どこか締め上げられたように、苦しくなった。
平野に名前を呼んでもらいたいなどと、甘えたことを考えた。
平野の名前も、呼んだことなどないのに。
「大丈夫か?きつくない?」
「大丈夫……」
「ごめん俺そろそろ、ダメなんだけど」
「ん……」
「最後だけ、ごめん、キツいかも……」
「え?あ、ああっんっやぁっ」
「ごめ、ん」
もうそろそろ限界ってとこで、平野の膝裏を押さえつけて、一番奥まで沈み込んだ。
平野の顔が苦しそうに歪むのを見てごめんと思いながら、止められずに、そのままがつがつと突き込んでしまった。
半ば押しつぶすように抱きしめてイきながら、最後の最後に結局自分勝手に流されたことを軽く自己嫌悪したけれど、強い快感と続く倦怠感に飲まれてしまった。
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