123人が本棚に入れています
本棚に追加
その後の笹原はうって変わって余裕もなくて、焦ったように身体を押さえつけられた。
その勢いについていけなくて、一度強く止めると、バツが悪そうにごめんと言う。
いいの、謝ってもらうようなことじゃない。
だって。
「望まれるって、嬉しいよ」
「……あー、あんまそういうこと、言うな」
私としてはちゃんと真面目に正直に答えたのに。彼はまた苛立ったように目を細めた。
ありていに言ってしまえば、笹原とのセックスはすごく、よかった。そんなことがあるのだと知ってしまって、愕然とした。
私は今までほとんど気持ちいいとか思ってこなかったし。セックスは、相手を繋ぎ止めるための手段でしかなかった。
こんなの、知らないよ……知らなかったのに
笹原が私に教えたのはまるで別物で、こんな未知のものを知ってしまって、これから私はどうしたらいいのだと持て余し気味に思う。
こんなの。
セックスがこんなものだと知ってしまったら、また望んでしまうじゃないか。
望んだところで、ほとんど手に入らないと、身をもって知っているのに。
どうしよう。どうしたらいいんだ。
こんな結果になるなんて、全然予想してなかった。
誘ったのは、巻き込んだのは、確かに私の方だったけど。
打ち上がり一瞬眩しく咲く花火のように、勢いで押し切ったその場限りの出来事になるはずだったのに。
どうしよう、どうしたらいいんだ。
こんな、こんなに甘やかされたら、もっともっとと欲しくなる。
未来を望んでしまいたくなる。
最初のコメントを投稿しよう!