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「分かった。これからは、俺がお前を、甘やかしてやる」
上目遣いに向かってくる、探るような視線は、やはり切実で、それで。
ああ、もう、今日は、今日こそ、手は出すまいって思ってたのに。
手のひらを、頬から首の後ろへ滑らせる。
そのままぐっと引き込む。
斜めに倒れ込んでくる彼女の肩を胸で受け止めて、そのまま首を傾げて口付けた。
「あ……」
「……上手くなっただろ?多少は」
「多少っていうか……なにそれ、慣れてる?」
「さあどうだろうな、まあ7年も経てば、人は成長すんだよ」
俺たちは何も知らないな。
この、互いを隔てる空白が、いつか苦しくなったりするのだろうか。
それでも。
綺麗になったよお前
あの頃だって、とても可愛いと思っていたけど
もう一度戯れに、唇の端にキスをする。
わざと小さく音を立てる。目元に涙を光らせたまま、ぶわっと赤くなった平野のうぶな反応が可愛くて、笑いながらがしゃがしゃと頭を撫でた。
「本当は、お前んちにだって寄っていきたいけどな。行ったらまた絶対、押し倒しちゃうから」
「別に、いいのに」
案の定そんなことを言う、平野の前髪をちょっとひっぱって弄んぶ。
それが気に障ったのか、かすかに上目遣いで睨んでくるのが、おかしくてとても可愛い。
「連絡して、予定聞いて、待ち合わせて、どっか出掛けて食事して、それからにするって決めてんの、次は」
「なにそれ」
「平野とまたしたいと思ってるけど、別に、付き合おうって言ったのはそれだけが目的じゃないし。だから、そればっか、みたいに思われるの嫌なんだよ。だけど、俺は、俺の決意なんてすぐに裏切るから」
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