1/4
前へ
/86ページ
次へ

まるで、空が焼けてしまうのではないかと思うほどの集中砲火で、光が満ちてすぐに消えて。 あとにはうっすらと漂う煙が残って、今年の花火も終わる。 花火の下にいた非日常感が消える。戻ってくる日常。 周囲の人が動き出す気配を感じながら、座り込んだまま口を開く。 「どうする?このあと」 「どうしようか」 「飯でも、行く?」 そう誘ったらすぐに、行く、と返された。 飯食ったら、それで?そのあとはどうするのか…… 俺と平野の些細な物語が転がりだそうとしている予感が、沸々とする。 7年前に、がっちりと止まったはずなのに。 今になって動き出しそうで。 なんなんだよ……なんなんだよ、いまさら 呆れながらそう思うのに、振り切って切り捨ててしまえない自分も、どうかと思う。 「したら、車、出すわ」 「車?」 「この辺、何もないだろ。俺、車で戻ってきてるから」 実家近くのコンビニに平野を待たせて、車を取ってくる。7年前には持っていなかった移動手段で、格段に自由度が増した俺はどこにでも行ける。 平野を乗せて食事にも行けるし、そのまま帰りたいと言うなら、予定を早めて東京まで送って行ってもいい。 なんでもいい、どこにでも行ける。そのことがかえって、自分を縛るような気もしている。
/86ページ

最初のコメントを投稿しよう!

121人が本棚に入れています
本棚に追加