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「でも陽菜、あれ、もうやめてもらえる?碧は俺のだから」
うわ
思わず耀くんを凝視した。
「な…に、それ。耀ちゃん」
お姉ちゃんの顔が引き攣ってる。
「今までのは仕方ないけど、恋人の写真をばら撒かれるのは気分のいい話じゃないから」
恋人、という響きに、姉がぴくりと反応した。
「前に陽菜が言ってた通りだよ。俺はただ碧を可愛いなって眺めてるだけじゃ満足できなくなっていった。落としてやろうって思ったよ。可愛がって甘やかして。とはいえ同性だからね、上手くいくなんて少しも思ってなかった。碧は俺に甘えてきてたけど、それは恋じゃなかった」
「…それが、どうして…?」
姉の掠れた声と、今にも決壊しそうな目元が光る。
「まあそれは、色々あって、だよ」
耀くんが少し笑った。その耀くんの表情を見た姉が僕に強い視線を向けた。
「何簡単に落とされてんのよ、碧」
姉のその言葉にカチンときた。
「簡単にとか言わないでよ。僕だって悩んだんだよ。それに、落とされるのはいけないことなの?優しくされて、大事にされて、好きになっちゃいけないの?僕は元々耀くんが好きだったよ。それに違う種類の好きがプラスされただけだよ」
姉は唇を噛み締めて僕を見ていた。
時計の針のカチカチいう音が響く。
ふっと姉がため息をついた。
「もういい。分かった。ノロケはたくさん」
「陽菜」
「お姉ちゃん」
僕と耀くんは同時に姉に呼びかけた。
その時玄関の方で鍵を開ける音がした。
お母さん帰ってきた。
「あーあ。なんか疲れちゃった」
姉がうーんと伸びをした。
リビングのドアが開いて「ただいま」と母が入ってきた。
「あら耀くん。おばあさん大丈夫?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
母にそう言って、耀くんは「じゃ俺帰るね」と言った。僕は見送りに出て、姉は来なかった。
リビングに戻ると姉はいなかった。
「陽菜は部屋に上がっちゃったわ。疲れたから今日は手伝えないって」
キッチンで母がエコバッグから食品を出しながら言った。
「あ…そっか…。じゃ、僕頑張るから…」
ごめんねお母さん、という気持ちでそう言うと、母は「いいのよ」と言った。
「耀くんと3人で何かあったんでしょ?」
「え…」
僕は母を見て固まってしまった。
「だって3人で話してたでしょ?さっきまで」
「あ…うん。そう、そうだね」
やばい。変な反応しちゃった。
心臓がばくばくいいながら、でも何でもなさそうな顔をして、夕食の支度の手伝いをする。母もいつも通りの指示を出す。
「そういえば、この前の碧が熱出した日だけど」
びくっとして、きゅうりのスライスが半円になった。
「な、なに?」
気を取り直してきゅうりに向かう。母はピーマンを軽快に刻んでいく。
「耀くんにおにぎり持ってったら、あんたが耀くんにしがみついてるじゃない」
スタン、と包丁が滑る。
「だからね、半分冗談で、泊まる?って訊いてみたの。そしたらすぐに「はい」って言うからちょっとびっくりしちゃった」
母は笑いながら、でも手を止めずにそう言った。
「耀くんは昔っから、碧が病気すると1番心配してくれるのよね。私が帰って来るまで陽菜と2人で見ててくれて、帰ってからも電話かけてくれるの。碧、どうですか?って」
「え?」
そんなの知らない
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