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城下には、既に何百人もの村人が、予言を聞こうと集まっていた。
「皆の者、今日のお告げが出た」
バルコニーに毅然と現れたアルバートを拍手と歓声が迎え入れる。
「これより、オースティン=ルメール卿の予言を公表する。
8月2日、本日は……」
伝達用の巻物が広げられると、村民全員が一斉に固唾を呑んだ。
「何事も心配なく過ごせるだろう、とのことであった」
アルバートの額から冷や汗が一滴垂れ落ちる。
事実と異なる宣布への罪悪感が、多少なりとも妙な間を生み出してしまっていた。
「以上、解散してよい」
速やかに部屋へ戻るアルバート。
今しがた目覚めたオースティンがベッドの上で項垂れている。
「兄さん、落ち着きましたか?
民衆がパニックに陥らぬよう、明言は伏せておきましたので」
予言に精神を囚われた男は再び悲嘆に暮れる。
「滅亡する……村の滅亡は絶対に避けられない!
今日だ、間違いなく……!
キャロルド村は終焉に誘われたのだ……!」
アルバートが歩み寄って宥めようとしたそのとき、
廊下から忙しい足音が聞こえた。
「えらいこっちゃ、えらいこっちゃ!」
「……待て!」
扉が開け放たれ、僅かな隙間が生じる。
慌ただしく走り去る村人の後ろ姿が、アルバートの目に映った。
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