予言:滅亡

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 布告の違和感を見逃さなかった村人モーガンは、 警備を掻い潜って城に忍び込み、真実を盗み聞いたのだった。 「皆、聞いてくれ!  実際のお告げでは、今日中に村が滅亡するらしい!  儂らは騙されていたんじゃ!」 他の村人も続々と顔を出す。 「何だって!」 「モーガンさん、それは本当か?」 村中に得体の知れない不安が渦巻く。 城下の混乱を目の当たりにしたアルバートは眉を顰めた。 「面倒なことになった……」 とてつもない焦燥感に駆られた彼は、 武器庫で保管されているスナイドル銃に手を掛ける。 「間違いない。確かにこの耳で……」 明かされざる予言を暴露するモーガンの舌が突として止まった。 甲高い悲鳴と共に、熱を持った銃口から白煙が立ち上る。 「兄さん、逃げましょう!  このままでは、じきに城も落とされてしまいま……」 (すき)が貫いた胸部から鮮血が零れる。 出血多量により、アルバートは時を移さずして尽き果てた。 「我々を(たぶら)かすどころか、手を下しさえしたルメール兄弟を赦すな!」 あっという間に民衆は城を取り囲んだ。 指一本触れただけで城壁が崩れてしまいそうなほど、 支配は刹那に没落してしまった。 「免れない滅亡の運命(さだめ)よ、どうか……」 オースティンの切なき願いが空に浮かんでは、 為す術なく曇り空に溶けて消えていった。
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