いつもと何かが違う日

7/15
前へ
/117ページ
次へ
怪しい来客に、家の中にいるのを悟られないよう、決して足音を立てないようにして2階に上がる切夜。 勿論、剛と愛菜も一緒だ。 3人がそっと階段を上っている間も、 ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン と、鳴り響くインターホン。 先ほどから全く鳴り止むことなく、ほぼ同じ間隔で鳴らされるインターホン自体にも恐怖を覚えるが――そんな気持ちをどうにか打ち消して、3人は2階に上がっていく。 そうして、辿り着いた両親の寝室。 彼らはそのベッドサイドにある窓から、並んで下の――玄関の様子を窺う。 そこにいたのは――真っ赤なロングコートを羽織ったかなり長身の若い女性だった。 彼女が、まるで……全身で押すようにして、大きく体を揺らしながらインターホンのボタンを同じ間隔で鳴らしているのである。 長い艶のある黒髪を揺らしながら、体を揺らしてインターホンのボタンを何度も何度も押し続ける女性。 (カメラに映ったのは、あの女の人が着てるコートだったのか) 切夜は、そう胸を撫で下ろす。 玄関のインターホンの位置的に、カメラは丁度あの女性の胸か鎖骨の辺りに当たるだろう。 であれば、カメラいっぱいに赤が映し出されても仕方がない。 (良かった、普通にお客さんだった) 切夜は安心すると、窓を開けて上から客人に声をかけようとする。 (きっと、これだけインターホンを鳴らすってことは、何か急ぎの用事なんだろう) そう考えて、窓の鍵に手を伸ばす切夜だが――その手をぎゅっと剛の手が掴んで止めた。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加