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怪しい来客に、家の中にいるのを悟られないよう、決して足音を立てないようにして2階に上がる切夜。
勿論、剛と愛菜も一緒だ。
3人がそっと階段を上っている間も、
ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン
と、鳴り響くインターホン。
先ほどから全く鳴り止むことなく、ほぼ同じ間隔で鳴らされるインターホン自体にも恐怖を覚えるが――そんな気持ちをどうにか打ち消して、3人は2階に上がっていく。
そうして、辿り着いた両親の寝室。
彼らはそのベッドサイドにある窓から、並んで下の――玄関の様子を窺う。
そこにいたのは――真っ赤なロングコートを羽織ったかなり長身の若い女性だった。
彼女が、まるで……全身で押すようにして、大きく体を揺らしながらインターホンのボタンを同じ間隔で鳴らしているのである。
長い艶のある黒髪を揺らしながら、体を揺らしてインターホンのボタンを何度も何度も押し続ける女性。
(カメラに映ったのは、あの女の人が着てるコートだったのか)
切夜は、そう胸を撫で下ろす。
玄関のインターホンの位置的に、カメラは丁度あの女性の胸か鎖骨の辺りに当たるだろう。
であれば、カメラいっぱいに赤が映し出されても仕方がない。
(良かった、普通にお客さんだった)
切夜は安心すると、窓を開けて上から客人に声をかけようとする。
(きっと、これだけインターホンを鳴らすってことは、何か急ぎの用事なんだろう)
そう考えて、窓の鍵に手を伸ばす切夜だが――その手をぎゅっと剛の手が掴んで止めた。
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