いつもと何かが違う日

8/15
前へ
/117ページ
次へ
「どうしたんだよ?剛」 いきなり手を掴まれ、首を傾げる切夜。 一方剛は、今までに見たことがない位、真っ青な顔色をしていた。 「切夜……声をかけちゃ、絶対に駄目な気がする」 震えながらそう告げる剛に、益々意味が分からなくなり、切夜はこう尋ねた。 「声をかけちゃ絶対に駄目って……何でだよ?急ぎの人かもしれないぞ?」 しかし、切夜の言葉に、剛はゆっくり首を振る。 「それでも、だよ。だって……切夜はおかしいと思わないの?」 「おかしいって何が?」 剛の言葉に首を捻る切夜。 すると、剛は……声を潜めるようにして、切夜に告げた。 「だって、今、真夏だよ……?」 「あっ……!」 剛の言わんとしていることが伝わり、切夜もさぁっと青ざめる。 (確かに、今は夏真っ盛りの8月だ。今日だって、35度以上の猛暑日なのに……そんな中、ロングコートを着てるなんておかしいじゃないか) 夏にコートを着ている人がいない訳ではない。 が、あそこまでのロングで――しかも、手首までびっちりと袖のある長袖のコートだと、着ている人は相当珍しいだろう。 (もしかしたら、何かヤバイ人なのかもしれない……) 切夜はその可能性に思い至り、剛にチラリと目配せをする。 切夜の合図に気付くと、小さくコクリと頷く剛。 彼らは愛菜の手を繋ぐと、2階の1番奥にある切夜の部屋に避難した。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加