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「どうしたんだよ?剛」
いきなり手を掴まれ、首を傾げる切夜。
一方剛は、今までに見たことがない位、真っ青な顔色をしていた。
「切夜……声をかけちゃ、絶対に駄目な気がする」
震えながらそう告げる剛に、益々意味が分からなくなり、切夜はこう尋ねた。
「声をかけちゃ絶対に駄目って……何でだよ?急ぎの人かもしれないぞ?」
しかし、切夜の言葉に、剛はゆっくり首を振る。
「それでも、だよ。だって……切夜はおかしいと思わないの?」
「おかしいって何が?」
剛の言葉に首を捻る切夜。
すると、剛は……声を潜めるようにして、切夜に告げた。
「だって、今、真夏だよ……?」
「あっ……!」
剛の言わんとしていることが伝わり、切夜もさぁっと青ざめる。
(確かに、今は夏真っ盛りの8月だ。今日だって、35度以上の猛暑日なのに……そんな中、ロングコートを着てるなんておかしいじゃないか)
夏にコートを着ている人がいない訳ではない。
が、あそこまでのロングで――しかも、手首までびっちりと袖のある長袖のコートだと、着ている人は相当珍しいだろう。
(もしかしたら、何かヤバイ人なのかもしれない……)
切夜はその可能性に思い至り、剛にチラリと目配せをする。
切夜の合図に気付くと、小さくコクリと頷く剛。
彼らは愛菜の手を繋ぐと、2階の1番奥にある切夜の部屋に避難した。
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