いつもと何かが違う日

9/15
前へ
/117ページ
次へ
(幸い、あの変な女の人はインターホンを押してるだけで押し入って来たりする様子はない。玄関も、母さんが出掛ける時に全部鍵を閉めていってくれたみたいだし) ――ならば、1番気付かれ難い切夜の部屋で、あの変な女性がいなくなるまでやり過ごすのがベストだろう。 切夜はそう判断するや、剛と愛菜を連れて、自分の部屋に入り、念のためドアに鍵をかけた。 「これで安心だ」 剛と愛菜に親指を立て、笑ってみせる切夜。 「あとは、母さんが帰ってくるまで漫画でも読んで過ごそうぜ!」 「うん、そうだね」 若干顔色の良くなった剛も、切夜の言葉に大きく頷く。 「昨日さ?ちょうど、雑誌の最新号を買って貰ったから……見せてやるよ!」 「本当っ?やったぁ!」 ―……シタ……― 勇んで、本棚から自慢の最新号の漫画雑誌を取り出す切夜。 「俺のおすすめは、今月号から始まった新連載だぜ」 ―……マシタ……― 「へー。そんなに面白いの?」 ―……マイリマシタ……― 部屋の電気をつけ、2人で漫画雑誌を覗き込みつつ――はっとする切夜と剛。 (お、おかしい……!) 先ほどから、話しているのは切夜と剛だけの筈なのに――別の誰かの声がするのだ。 2人が話す度、その会話に混じるようにして聞こえてくる謎の声。 抑揚はないが、やや高めの声はまるで女性の声のようだ。
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加