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しきりに首を傾げながら、剛と愛菜の様子も見てみる切夜。
すると、やはりと言うべきか――2人の指からも指輪が消えているようだった。
というか、愛菜に至ってはあの衝撃な出来事を余りよく覚えてすらいないようである。
(まぁ……凄く変な夢だったもんな)
――そう、俺達は夢を見たんだ。
昼間のあの出来事は、ただの怖い夢なんだ。
まるでそう思い込ませるかのように、自らに何度も言い聞かせる切夜。
……切夜だって、本当は分かっている。
(よく覚えていない愛菜は別として、俺と剛……2人が揃って同じ夢を見るか?)
――そんなこと有り得ない。
だが、それを有り得ないと認めたら、昼間のあの非現実的な出来事も本当に起きた出来事で……現実だったと認めなくてはいけなくなる。
(……だからこそ、俺は認める訳にはいかないんだ)
――あんな恐ろしい出来事が現実であった、と。
そう強く心に決め、努めて平静を装う切夜。
その後、彼の父親が彼らの好きなケーキを買って帰宅する。
だが昼間の出来事がずっと胸に引っ掛かり続けていた切夜にとっては――大好きなケーキの筈なのに、まるで砂を噛んでいるように感じられていた。
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