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「なぁ、待てって。こいつが盗ったって決まった訳じゃないんだろ?」
まるで場を和ませるように、明るい調子でそう告げる切夜。
しかし、切夜の言葉を義実は大きな声で否定した。
「いいや!こいつだね!俺が持ってきた羽ペンを、こいつ……召喚の儀式にちょうど良さそうだね、なんて言いながら、ずっと羨ましそうに触ってたんだ!!」
「そ、そんなぁ……!僕は、本当に儀式にちょうど良さそうと思っただけで、盗ってなんか……!」
泣きそうになりながらそう告げるのは、切夜と剛と同じクラスの生徒である足立 陸人――通称「オカルト」だ。
日がな、教室にへばりついて悪魔の本やら都市伝説の本ばかり読んでいる為、こんなあだ名がつけられてしまったのである。
「なに?お前、本当にそんなこと言ったの?オカルト」
目の前の義実を牽制しつつ、軽く振り向き、背後の陸人にそう尋ねる切夜。
切夜の言葉に、陸人は小さく頷くが、「でも、僕は盗ってなんていないんだ!」と叫び出す。
義実は陸人が犯人だと決めつけているし、陸人は完全にパニックになっているこの現状。
(……せめて、誰か先生を……!)
切夜はそう思って教室内を見回すが、剛以外に動いてくれそうなクラスメートはいなかった。
皆、お金持ちでかなり大柄な義実が怖いのだ。
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