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仕方なく、剛に目で合図を送る切夜。
それに気付くと、剛は勢いよく駆け出しながら、叫ぶ。
「俺、先生呼んで来るから!!!」
その言葉に怯んだ義実が、切夜達から距離を取った。
と、安心したのか――陸人がポツリと呟いた。
「……ああ、こんな時、シーレ王子がいたらなぁ」
「……っ?!」
(シーレ王子だって?!)
その言葉に思わず陸人を振り返る切夜。
切夜の脳裏には、あの夢の中で赤いコートの女が最後に言っていた言葉が甦っていた。
――『コレハイッコクモハヤクシーレオウジニホウコクシナケレバ……!!』
(……そうだ、あの女もシーレ王子と言っていた!)
切夜は、自らが望んで夢と思い込もうとしていたのも忘れ、陸人に問いかける。
「なぁ、オカルト?!そのシーレ王子って何なんだ?!」
切夜の勢いに驚き、びくりと震わせながらも――陸人は丸い眼鏡の鼻あて部分をくいと押し上げながら、切夜の質問に答えた。
「シーレ王子っていうのは、実在した昔の王様が使役した魔族で、魔界でも王子の位に就いている偉い人なんだよ」
「魔界の、王子……」
(何かもっとこう……架空の漫画のキャラクターとかだと思ってたけど……。まさか、魔族の王子の名前だったとは……)
何かとてつもなく嫌な予感に苛まれながら、再度「その名前」を口にしてみる切夜。
「……シーレ王子……」
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