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瞬間、義実も陸人も――提案した切夜ですら、一瞬言葉を失った。
が、1番早く我に返った陸人が、ぎゅっと切夜の両手を握る。
「ありがとう!拝君!君のお陰だよ!!拝君ってまるでシーレ王子みたいだね!!」
陸人の余りの喜びように、ややひきつる切夜。
一方義実は、暫し納得がいかないような、憮然とした表情をしていたが――やがて、自分の過ちを認めたのか、素直に「悪かったよ」と陸人に頭を下げた。
こうして、円満に解決を迎えた教室での朝の騒動。
しかし、解決した切夜は胸の内に言い知れない不安を抱えていた。
(実在するらしい魔族の名前に、頭の中の声が告げた通りの場所で見つかった羽ペン……)
それらの事実が切夜に伝えているのは――「昨日の昼間の出来事は全て現実だった」ということで。
(……なら、あの消えた指輪は何処に行ったんだ……?)
切夜は、消えた指輪の行方に、強い不安を覚えていた。
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