怪人の噂

1/4
前へ
/117ページ
次へ

怪人の噂

愛菜が不思議な仔犬のような生き物を拾ってから数時間後。 下校時刻になった切夜達は、帰る用意をしながらクラスメート達とおしゃべりをしていた。 と、クラスメートの1人がこんなことを口にする。 「そう言えば、知ってるか?……この近くでさ?最近、口裂け女が出たらしいぜ?隣の小学校の奴が襲われて、今も意識不明らしい」 「え、マジ?!」 あからさまに嫌そうな……怯えた様子を見せる数人の女子生徒達。 すると、男子はそんな女子生徒達に気を良くしたのか、わざと声を潜め――この街に出ると噂の口裂け女についての怪談を語り始める。 「なんでもさ~?……口裂け女って、人間だった頃は超美人だったんだってよ!でも、ある日交通事故に遭って、顔に酷い怪我をしちゃったんだって!けど、それも治る筈だったらしいぜ?でも、その時手術を担当した先生がわざと失敗したらしいんだよ。医者は日本一の名医とか言われてたらしいんだけどさ」 (わざと、失敗……?) 何となくその言葉が胸の奥で引っ掛かる切夜。 彼は思わず、こう尋ねていた。 「なぁ?その医者……何でわざと失敗したんだ?」 すると、クラスメートは得意気に答えた。 「そりゃぁ、名医の名誉を捨ててでも自分の娘をオーディションで勝たせる為だよ!」 「自分の娘をオーディションで勝たせる為……?」 いまいち繋がりがよく飲み込めず、切夜は首を傾げる。 そんな切夜に、クラスメートはこう告げた。 「口裂け女はさ?事故の日から3ヶ月後に、大きな映画のオーディションに出る予定だったんだよ」
/117ページ

最初のコメントを投稿しよう!

53人が本棚に入れています
本棚に追加