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怪人の噂
愛菜が不思議な仔犬のような生き物を拾ってから数時間後。
下校時刻になった切夜達は、帰る用意をしながらクラスメート達とおしゃべりをしていた。
と、クラスメートの1人がこんなことを口にする。
「そう言えば、知ってるか?……この近くでさ?最近、口裂け女が出たらしいぜ?隣の小学校の奴が襲われて、今も意識不明らしい」
「え、マジ?!」
あからさまに嫌そうな……怯えた様子を見せる数人の女子生徒達。
すると、男子はそんな女子生徒達に気を良くしたのか、わざと声を潜め――この街に出ると噂の口裂け女についての怪談を語り始める。
「なんでもさ~?……口裂け女って、人間だった頃は超美人だったんだってよ!でも、ある日交通事故に遭って、顔に酷い怪我をしちゃったんだって!けど、それも治る筈だったらしいぜ?でも、その時手術を担当した先生がわざと失敗したらしいんだよ。医者は日本一の名医とか言われてたらしいんだけどさ」
(わざと、失敗……?)
何となくその言葉が胸の奥で引っ掛かる切夜。
彼は思わず、こう尋ねていた。
「なぁ?その医者……何でわざと失敗したんだ?」
すると、クラスメートは得意気に答えた。
「そりゃぁ、名医の名誉を捨ててでも自分の娘をオーディションで勝たせる為だよ!」
「自分の娘をオーディションで勝たせる為……?」
いまいち繋がりがよく飲み込めず、切夜は首を傾げる。
そんな切夜に、クラスメートはこう告げた。
「口裂け女はさ?事故の日から3ヶ月後に、大きな映画のオーディションに出る予定だったんだよ」
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