始まりは真夏の夜に

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小さく幼いその身を、(まばゆ)く輝く金のドレスに包み――ドレスと同じ金の靴を鳴らしながら、切夜の目の前に現れた愛菜。 すると、彼女が不意に大きく両手を挙げる。 瞬間――100人近い人々が一瞬にして姿を現し、愛菜に向かって(ひざまず)いた。 『再度の現世へのご降臨、おめでとうございます!シヴァの女王!』 人々は一斉にそう告げるや、とても嬉しそうな視線を愛菜に向ける。 (シヴァの女王……?こいつら、何を言ってるんだ?こいつの名前は愛菜だぞ……) 自分の妹を全く違う名で呼ぶ人々に、強い不信感を覚える切夜。 と、宮殿の奥の方から――もう1人、誰かが姿を現す。 腰まではあろうかという艶やかな長い黒髪を、緩く首もとで束ねているその人物は、執事のような服を着た若い青年だった。 彼は、空へ向けて右手を掲げると――運動会の選手宣誓のように、高らかにこう宣言する。 「それではこれより……女王の御身(おんみ)に、戴冠(たいかん)の儀式を行う」 青年がそう告げると同時、彼が高く掲げた手の上に、太陽のようにきらきらと輝く……美しい金色の王冠が出現した。 王冠の中央に嵌まっているかなり大きな宝石は、ルビーだろうか? それは、まるで収穫直前の林檎のように綺麗な赤色で――見る者を誘うような光を放っていた。
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