53人が本棚に入れています
本棚に追加
(映画のオーディション……)
何となく、その言葉を胸の内で反芻する切夜。
クラスメートは、そんな切夜の様子には気がついていないようで、話を続けていく。
「口裂け女と医者の娘は同じオーディションに応募してて、主演での芸能界デビューを争ってたらしいぜ。でも、審査員や監督は、口裂け女の方に決めてたらしいんだ」
(ふんふん、成る程……)
切夜は頷きながらクラスメートの話を聞いていた。
それに気を良くしたのか、調子に乗ってどんどん喋り続けていくクラスメート。
「それを盗み聞きした医者の娘がさ?お父さんに頼んだらしいんだよ。「あいつを再起不能にして」ってさ。噂によると、事故に遭わせたのも、この医者と娘の仕業らしいぜ?ちなみに、医者の方はわざと失敗したのを苦にして自殺したって聞いたな」
「失敗やら自殺やら、命を大切にして……救う仕事の筈なのに、とんでもない医者だな」
(いや、でも自殺したってことは……まだ罪悪感はあったのか?)
切夜はそう感想を漏らす。
彼の言葉に頷くクラスメート達。
どうやら、皆同じ感想のようだ。
と、不意に剛がひょいと手を上げる。
「でもさ?それなら……口裂け女が襲うべきなのは、その医者や娘の方だろ?何で、関係ない隣の小学校の奴を襲うのさ」
(確かに……)
心の中で剛の質問に頷く切夜。
すると、クラスメートは先ほどより声を潜めてこう告げた。
「……それはさ?口裂け女の質問に正しく答えられなかったからだよ」
最初のコメントを投稿しよう!